1805年(文化2年) 大田南畝 マリエツトスベールを見物

(2003.12.31)

  なぜ土用丑の日にうなぎを食べるようになったのか?
一般的な説は、平賀源内がうなぎ屋に頼まれコピーを考えたのが始まりとか。
それに次ぐ説として、狂歌師の大田南畝(蜀山人)がやはりうなぎ屋に頼まれコピーを考えたというものです。※
 この大田南畝(蜀山人)は1749年江戸に生まれ、狂歌・洒落本・黄表紙などを次々に発表した人気作家であり、文化人でもありましたが、色々あったんでしょうね。晩年は役人になってます。
1794年幕府の採用試験に合格し、1804年幕史としてに長崎奉行所に赴任。
長崎での事は「百舌の草茎」「瓊浦雑綴」「瓊浦又綴」などの彼の著作に詳しく残されています。ちなみに瓊浦とは長崎のこと。
 その「瓊浦雑綴」の文化ニ年三月二十一日の記載に
 「出嶋の水門より紅毛加比丹の部屋に入て、台の上にて玉をつく戯れをみる。」
欄外に「玉突の戯れを「マリエツトスベール」と云ふ。」とあります。
南畝がカピタンの部屋でビリヤードを見たのは間違いありませんが、マリエツトスベールとはビリヤードのことでしょうか?はたまたその時に遊んでいたゲームの種類の名前なのでしょうか?
そこでオランダ語の辞書で調べて見たのですが、よくわからない。
おそらくスベールは spel (遊び 遊戯 ゲーム) でしょう。マリエツトが判らない。
○○遊び ですかね?
1800年代の出島商館員の記録である「長崎オランダ商館日記」(雄松堂出版)の巻末に、当時使われていて現在オランダで使われていない「特殊語彙」があって
biljaadspel 玉突き遊び
billiarten 玉突き
があります。 billiarten がマリエツトと聞こえたのですかね。

 余談ですけど、出島関係の本(世界史の中の出島 など)を読むとビリヤードのことをさす言葉として
traktafel という単語が出てきます。
tafel は(テーブル 台)ですが、trak が判らない。すいませんね。○○台という意味ですか。
これも現代オランダでは使われていないみたいです。

※源内と南畝は親交もあり(これは事実)、南畝の狂歌をヒントに源内がコピーを考えたという説もあります。

参考文献 蜀山人全集 第3巻 日本図書センター
大田南畝 浜田義一郎 吉川弘文館
長崎オランダ商館日記 日蘭学会(編)・日蘭交渉史研究会(訳注) 雄松堂出版
世界史の中の出島 森岡美子 長崎文献社